高温超伝導

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高温超伝導体とは?    東大理学部・高校生講座

1986年にベドノルツとミュラーによって発見された高い超伝導転移温度を持つ銅酸化物を一般に高温超伝導体と呼びます。発見から20年以上経過しますが、高温超伝導が発現するメカニズムは未だに解明されていません。最近では、新たに鉄系高温超伝導体が日本の研究グループにより発見されました。超伝導の発現機構解明を目指し、世界中で研究競争が展開されています。

銅酸化物高温超伝導体は、銅と酸素のネットワークで出来た2次元面 (CuO2) にホールなどのキャリアをドープすることにより超伝導が発現し、鉄系高温超伝導体は、FeAs面にキャリアをドープすることにより超伝導を発現します。


高温超伝導体の電子構造

擬ギャップ、フェルミアーク

フェルミ準位上の光電子強度を運動量空間にマップすることでフェルミ面を可視化することができます。ドープ量の少ない領域ではフェルミ面の一部が消失してしまう、通常の金属では考えられない現象が起こります。これは擬ギャップ状態、残ったフェルミ面の一部はフェルミ・アークと呼ばれ、高温超伝導の起源と深く関わっていると考えられており、その性質を詳しく調べる研究が進められています。

多層系高温超伝導体

高温超伝導体の転移温度は、CuO2面の枚数が多くなると高くなる経験則があります。CuO2面を3枚(外側2枚、内側1枚)もつBi2Sr2Ca2Cu3O10+δは最適ドープ試料でTc = 110 Kと高いTcを示します。この物質について外側のCuO2面(OP)と内側のCuO2面(OP)の超伝導ギャップの大きさが異なることが分かりました。このことは、CuO2面の枚数と超伝導の関係を明らかにする手がかりになると考えられます。

電子ドープ型銅酸化物高温超伝導体

M. Horio <I>et al</I>., arXiv:1502.03395 (2015).

電子ドープ型銅酸化物高温超伝導体では、超伝導状態においても強い反強磁性相関が存在し、そのために左図のcut2のバンドに大きなギャップ(擬ギャップ)が開くとされてきました。しかし、試料合成後に不純物酸素を除去するために行うアニール(加熱)処理を最適化させた試料では、高い超伝導転移温度が得られた一方で、ARPESスペクトルには擬ギャップが全く観測されず、反強磁性相関が大きく抑制されていることが分かりました。左図には、Pr1.3−xLa0.7CexCuO4のフェルミ面、E-kプロット、EDCを示しており、上段からas-grown、weakly annealed(条件が最適でない)、annealed(条件最適)試料のものです。この結果は銅酸化物高温超伝導体における超伝導と反強磁性との関係性の見直しをせまるものです。


鉄系超伝導体の3次元的フェルミ面

T. Yoshida <I>et al</I>., Phys. Rev. Lett. 106, 117001 (2011).

銅酸化物高温超伝導体の電子構造は2次元的であることが良く知られていますが、一方、鉄系超伝導体の電子構造は3次元性が強いことが分かってきました。左図はBaFe2(As1-xPx)2の最適組成の3次元的フェルミ面を観測したものです。kz方向にフェルミ面の大きさが変化していることが分かり、3次元性が強いことを示しています。フェルミ面形状の3次元性は超伝導対称性に大きな影響を及ぼすと考えられます。


等原子価置換した鉄系超伝導体

H. Suzuki <I>et al</I>., Phys. Rev. B <B>89</B>, 184513 (2014).

鉄系超伝導体SFe2(As1-xPx)2(S=Ba, Sr)は、P置換に伴い反強磁性相転移が抑制され、キャリアドープを伴わずに圧力効果によってTC ≈ 30 Kの超伝導を実現します。この物質では超伝導ギャップにノード(超伝導ギャップ値が0となる点)が存在することが指摘され、注目を集めています。我々は、ARPESと第一原理計算からSrFe2(As0.65P0.35)2のフェルミ面とそのkz依存性を決定しました(左図)。また、フェルミ面のネスティングよりもFeAs層間の磁気相互作用が反強磁性秩序の発現に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。この結果は、鉄系超伝導体における超伝導発現機構解明の手掛かりとなります。