スピントロニクス・界面

藤森研ホーム研究研究テーマ高温超伝導, スピントロニクス・界面

スピントロニクスとは?

半導体記憶装置(DRAM)に代表される電子の電荷を制御するエレクトロニクスと、ハードディスクドライブ(HDD)に代表される電子のスピンを制御するマグネティクスの両方の技術を併せ持ったスピントロニクスが世界的に注目を集めています。そのようなデバイス技術を支える素材として私たちの研究室ではハーフメタル希薄磁性半導体について研究しています。

トンネル磁気抵抗(TMR)素子

トンネル磁気抵抗(TMR)素子

ハーフメタルの電子構造

ハーフメタルの電子構造

ハーフメタル

ホイスラー合金Co2MnβGe0.38のX線磁気円二色性 (XMCD)

Mn含有量の違いによるホイスラー合金Co2MnβGe0.38のX線磁気円二色性(XMCD)

ホイスラー合金X2YZの結晶構造

ホイスラー合金X2YZの
結晶構造


Mn含有量を減らしていくと磁化が強くなり、ハーフメタル性が強まっているのが観測されます。

電気伝導に関与する伝導帯に注目した時に、一方のスピンの電子はフェルミ準位でギャップを持つ(半導体的)のに対し、もう一方のスピンの電子はフェルミ準位を横切る(金属的)物質をハーフメタルと呼びます。スピントロニクスの分野では100%スピン偏極した電子を取り出せる物質として期待されています。このような物質の候補の1つとしてホイスラー合金があります。

ハーフメタル酸化物LSMO薄膜の角度依存XMCD

ハーフメタル酸化物La<sub>0.6</sub>Sr<sub>0.4</sub>MnO<sub>3</sub>薄膜の角度依存XMCD

ハーフメタル酸化物La0.6Sr0.4MnO3薄膜の角度依存XMCD

右図はLa0.6Sr0.4MnO3薄膜の角度依存XMCDの結果です。測定した角度依存XMCDスペクトルから、磁場角度ΘH=60°となる付近でXMCDの符号が反転し、電子のスピンが入射X線に対して垂直に向くことが分かります。実験結果は印加磁場の方向に比べて電子のスピンが面内に向きやすいことを示しており、このXMCD強度の角度依存性は磁気異方性の効果を取り入れたシミュレーションにより再現されました。

希薄磁性半導体

希薄磁性半導体Zn1-xCoxOのX線磁気円二色性 (XMCD)

希薄磁性半導体Zn1-xCoxOのX線磁気円二色性 (XMCD)

半導体に磁性原子をわずかにドープすることで、半導体と磁性体の両方の性質を示すようになった物質です。磁性体のスピン自由度の操作と、半導体の性質を利用した既存のエレクトロニクスを融合することで新しいデバイスの開発が期待されます。
右図は実験から得られたXMCDスペクトルと、原子多重項計算・クラスターモデル計算などの理論計算の比較です。金属イオンの価数や結晶構造、周囲の原子の影響の強さを変えることで、実験結果を再現できるパラメータを見出します。

n型希薄磁性半導体(In,Fe)As:Be

n型希薄磁性半導体(In,Fe)As:BeのX線磁気円二色性

n型希薄磁性半導体(In,Fe)As:BeのX線磁気円二色性

(In,Fe)As:Beは最近発見された、報告例の稀なn型の希薄磁性半導体です。Feとともにダブルドナーとして働くBeをドープすることで電子が導入され、強磁性が発現します。XMCDを用いた研究によって、ナノスケールの強磁性ドメインがキュリー温度以上でも存在し、それがFeの濃度ゆらぎによるものだと分かりました。

L10型規則構造と強い磁気異方性

磁気異方性の強いL10型規則構造を持つFePtのSiO2で覆われたナノ微粒子のXMCD

磁気異方性の強いL10型規則構造を持つFePtのSiO2で覆われたナノ微粒子のXMCD

ハードディスクドライブ(HDD)では、強い磁気異方性を持つ記録媒体を使うとデータの記録密度が向上するため、強い磁気異方性を持つ物質の研究が進められています。その中でも、L10型規則構造を持つFePt合金は構造由来の強い磁気異方性を示し、有望な次世代の記録媒体材料として注目されています。
SiO2-coated FePtナノ微粒子について、高磁場領域まで測定したXMCDスペクトルから、元素選択的な磁化の磁場依存性が飽和するまで得られました(右図)。この形がStoner-Wolfarth modelによってうまく説明できたことから、SiO2-coated FePtナノ微粒子が大きな保持力(HC)を持つ原因が、微粒子全体が単一の磁区を形成し、微粒子同士の相互作用が少ない系であることがわかりました。


界面物性とは?

電子間相互作用によって互いの運動に強い相関を持つ電子集団からできる物質を強相関物質と呼びます。強相関物質の起こす代表的な現象は、銅酸化物系や鉄ヒ素系での高温超伝導、マンガン酸化物系での巨大磁気抵抗などです。近年、成膜技術の発展に伴い強相関薄膜の物性が広く調べられるようになり、強相関物質の界面に現れるまったく新しい物性を探る動きが活発になっています。

電荷・スピン・軌道自由度の競合

電荷・スピン・軌道自由度の
競合

強相関物質の典型的な相図

強相関物質の
典型的な相図

強相関界面

強相関界面

薄膜作成技術(PLD法)

薄膜製作技術(PLD法)

原料をレーザーで加熱し、蒸発した分子を基板上に吸着させることで薄膜を製作します。一分子層単位で薄膜成長をコントロールでき、良質な単結晶格子や超格子の成膜が可能です。

PLD法で作製した薄膜・界面の例

SrVO3薄膜の角度分解光電子分光

SrVO3薄膜の角度分解光電子分光

薄膜化により強相関物質SrVO3のフェルミ面、準粒子分散の精密観測が可能になりました。準粒子分散には、フォノンのエネルギーが観測され、電子-格子相互作用が強いことが明らかになりました。

La0.6Sr0.4MnO3薄膜のX線磁気円二色性 (XMCD)

La0.6Sr0.4MnO3薄膜の
X線磁気円二色性 (XMCD)

強磁性金属La0.6Sr0.4MnO3の磁化が、膜厚を薄くしていくことにより減少していくのが見られます。